高齢者の摂食嚥下機能と特殊性 |
兵頭 政光 |
高齢者の嚥下障害は病態が複雑で,精神・身体機能の低下などから嚥下リハビリテーションの実施や外科的治療の適応に際しても多くの問題がある. |
虚弱高齢者における疲労と嚥下機能 |
中尾 真理ほか |
筋の協調運動で嚥下は起こる.筋には1型線維と2型線維があり,舌骨上筋群や中・下咽頭収縮筋は2型線維優位である.加齢で2型線維は萎縮し,高齢者の嚥下は予備能が低い. |
サルコペニアと老化に伴う体格変化と嚥下障害 |
大久保啓介 |
サルコペニアは高齢者の摂食嚥下障害を説明しうる新しい概念である.サルコペニアの摂食嚥下障害を念頭におくことで,嚥下障害の予防や改善,健康寿命の延伸が可能となる. |
加齢による生理的な嚥下機能低下の要因 |
田中加緒里 |
嚥下予備能低下の要因となる加齢変化には,嚥下器官の解剖学的,生理学的変化が大きく関わっているが,姿勢や呼吸機能などの全身性変化の影響も重要である. |
高齢者頭頸部癌患者と嚥下障害 |
藤本 保志 |
高齢者頭頸部癌患者の治療は加齢による嚥下機能低下を考慮した治療方針を立てる必要がある.同時に精神的心理的側面からもリスク評価を行うことが重要である. |
高齢者の神経内科疾患における摂食嚥下障害 |
野﨑 園子 |
神経内科疾患の摂食嚥下障害を考える場合,疾患について最新の知識もふまえた疾患概念を理解することが重要である.脳血管障害,パーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症,脊髄小脳変性症,重症筋無力症について概説する. |
高齢者に対する誤嚥検診の実際 |
今泉 光雅 |
高齢者施設には,嚥下障害を認める入居者が多数存在することが確認された.高齢者の嚥下障害の発見に誤嚥検診は有用であると考えられる. |
高齢者の摂食嚥下障害のリスク因子 |
原 浩貴 |
高齢者の摂食嚥下障害には複数のリスク因子があるが,健康寿命延伸のためには早期から各個人における弱点となるリスク因子を把握し,因子の是正に努めることが望ましい. |
高齢摂食嚥下障害患者と口腔ケア |
加藤 健吾ほか |
高齢者の誤嚥性肺炎の予防に口腔ケアが重要である.口腔ケアは機械的清掃が基本であり,嚥下反射,咳嗽反射,認知力などを改善する効果が報告されている. |
高齢摂食嚥下障害患者の栄養管理 |
二藤 隆春 |
高齢摂食嚥下障害患者の栄養管理では,嚥下機能,栄養状態のみならず,合併症,精神・身体機能,生活環境なども十分に考慮して方針を決定する必要がある. |
高齢者の味覚・嗅覚に配慮した嚥下調整食 |
栢下 淳ほか |
高齢者では栄養状態が芳しくないことが多いため,十分なエネルギーや栄養素を摂取する必要がある.味覚が低下していることも多いため,高齢者の食事では,素材の味を生かした調理,香辛料などの利用が有用である. |
介護保険施設における摂食嚥下障害高齢者の経口維持と栄養ケア・マネジメント |
高田 健人ほか |
介護保険施設では,摂食嚥下障害などにより食事の経口摂取が困難となった要介護高齢者に対する,栄養ケア・マネジメントを基盤とした経口維持の取り組みが推進されている. |
認知症における摂食嚥下障害への対応 |
木村百合香 |
認知症における摂食嚥下機能障害の病態は原因疾患により様々である.原因疾患に応じた神経学的特徴を理解したうえで,質の高い摂食嚥下機能評価,指導を行うことが求められる. |
嚥下障害に伴う在宅高齢者に対する多職種による連携 |
西山耕一郎 |
耳鼻咽喉科医師は,在宅嚥下障害の対応から避けて通れない状況にある.バランスのよい対応が必要であり,嚥下機能評価と肺炎管理の両方の対応が必要である. |
高齢摂食嚥下障害患者の診療におけるリスク・マネジメント |
苅安 誠ほか |
医師は,リスク管理が自らの役割であることを知り,メディカル・スタッフの専門性と個々の力量を把握したうえで,リハビリテーションの状況・経過のモニタリングを行うことが大事である. |
嚥下障害のある高齢者への服薬指導 |
小出由美子 |
嚥下障害のある高齢者に安全な薬物療法を提供するためには,薬効や有害作用だけでなく,剤形や飲み方の工夫も必要である. |
高齢者嚥下障害に対する嚥下内視鏡検査・嚥下造影検査の概要 |
板東 秀樹 |
嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査はともに嚥下機能の正確な評価と治療方針の決定において重要であり,高齢者に対して実施するうえでの留意点を中心に述べた. |
高齢者に対する嚥下機能改善手術の概要 |
千年 俊一 |
高齢者に対して嚥下機能改善術を行う際は,できるだけ低侵襲な手技からの段階的アプローチが望ましい. |
高齢者に対する誤嚥防止術の概要 |
鹿野 真人 |
誤嚥防止術は重症嚥下障害の重要な治療法であり,高齢者社会がすすむ中で新たな役割が求められている.その役割を果たすために開発された新しい術式と選択の要点を解説する. |
在宅医療に向けての嚥下障害手術の概要 |
津田 豪太 |
外科的治療は麻酔を含めた侵襲の上に,術後リハビリテーションが必要である.体力が落ちて低栄養な高齢者では個体差に注意し,症例ごとに適切な術式を検討して行う必要がある. |
高齢者の摂食嚥下障害とリハビリテーションアプローチ |
北條 京子 |
高齢者における嚥下障害の原因は様々な要因が絡み複雑化するが,多角的な評価に基づき方針を立て,多職種連携により集約的かつ継続的な嚥下リハビリテーションを行うことが重要である. |