Ⅰ.総 論 |
なぜ評価が必要か? |
青柳陽一郎ほか |
リハビリテーション医療にはチームアプローチが重要で,そのコミュニケーションツールとして評価法は不可欠である.正確な評価が適切な治療につながる. |
Ⅱ.診察とスクリーニング |
摂食嚥下障害を疑う患者の何をみる? |
巨島 文子 |
・摂食嚥下機能とその障害に関する神経所見を理解する
・神経学的診察,評価方法を知る
・原疾患の特徴や病態を理解して対応する |
質問紙 |
深田 順子 |
摂食嚥下障害について問診で使用されている質問紙には,聖隷式嚥下質問紙,嚥下障害リスク評価尺度改訂版,EAT-10などがある.精度などの範囲を理解して使用することが必要である. |
水飲みテスト |
倉智 雅子 |
水飲みテストは,少量(1~5ml)の水のほか,被検者の状態に合わせて多め(90~100ml)の水を用いると,スクリーニングテストとしての誤嚥検出精度が向上する. |
反復唾液嚥下テスト(RSST) |
小口 和代 |
RSST(repetitive saliva swallowing test)は短時間で簡便かつリスクなく実施できる.カットオフ値3回でのスクリーニングは感度が高く特異度が低い.テストの位置づけと活用法について解説する. |
咳テスト |
若杉 葉子ほか |
不顕性誤嚥のスクリーニングのために開発された咳テストは,簡便であり侵襲性が低く,精度の高い検査である. |
頚部聴診法を用いた嚥下評価のポイント |
大野木宏彰 |
頚部聴診法はベッドサイドや食事場面で行える簡便で有用な評価方法である.咽頭期の病態を把握するために必要な嚥下音の特徴や聴診のコツについてまとめた. |
口腔内の評価 |
松尾浩一郎 |
摂食嚥下障害の評価において,口腔内環境の評価は欠かすことができない.本稿では,oral health assessment tool(OHAT)を用いた口腔環境の評価について概説する. |
栄養学的評価 |
吉村 芳弘 |
リハビリテーションの帰結には低栄養が関連するため,全患者に入院時に栄養評価を行うべきである.栄養評価には疾患や炎症が含まれるべきである. |
その他のスクリーニング評価 |
國枝顕二郎ほか |
KTBCやMASAは臨床的評価によるスクリーニングであり経時的変化の評価に有用である.GUSSは食形態を提案できる.近年咀嚼能力に関するツールも開発されている. |
Ⅲ.機器を用いた評価 |
舌圧検査:現状と将来展望 |
小野 高裕ほか |
舌圧検査は,近年多くのエビデンスが集積されており,嚥下の準備期・口腔期・咽頭期にかかわる舌機能を定量的に把握するうえで,簡便かつ有用なツールである. |
嚥下内視鏡検査(1)正常所見と異常所見 |
太田喜久夫 |
嚥下内視鏡検査における正常所見と異常所見について解説した.嚥下内視鏡検査の基本は,患者の協力が得られるようにすること,嚥下内視鏡の影響を少なくする操作法を習得することである.そのうえで評価する目的を明確にし,評価時の検査食や姿勢,嚥下法による嚥下動態の変化を理解して実施することで正常所見と異常所見の区別が容易になる. |
嚥下内視鏡検査(2)客観的評価 |
兵頭 政光ほか |
嚥下内視鏡検査のスコア評価法は,嚥下障害の様式や重症度を客観的に評価でき,経口摂取の可否の判断や嚥下リハビリテーション手技の選択などの治療方針決定に有用である. |
嚥下造影検査(1)正常所見と異常所見 |
西谷 春彦ほか |
本稿では嚥下機能評価のゴールドスタンダードである嚥下造影検査(videofluoroscopic examination of swallowing;VF)の方法ついて概説する.またVFの正常所見と異常所見について画像を用いて解説する. |
嚥下造影検査(2)評価法 |
加賀谷 斉ほか |
嚥下造影検査の評価には定性的評価と定量的評価があり,実際の検査場面では定性的評価が行われる.定量的評価としては時間計測や距離計測が行われることが多い. |
嚥下CT |
稲本 陽子 |
嚥下CTの特徴である嚥下動態の定量評価は基準値をもたらし,誤嚥・咽頭残留の正確な病態把握を可能としている.機能低下の原因となる運動低下を特定でき,アプローチすべき諸器官を明確に示すことができる. |
嚥下マノメトリー |
青柳陽一郎 |
高解像度マノメトリーは嚥下運動における内圧の変化をトポグラフィーとして捉える.嚥下障害の病態診断に適切なツールであり,治療方針の決定に有用な役割を果たす. |
筋電図検査 |
井上 誠 |
筋電位を記録することで筋収縮の定量的評価を行うものであり,日常臨床での活用場面は少ないが,機能研究のツールとしてはゴールドスタンダードの1つである. |
超音波を用いた嚥下機能評価 |
中藤 流以ほか |
体外式超音波を用いた新たな頚部食道運動評価法を開発した.同手法は,嚥下障害症例の治療効果判定が可能であり,新たな嚥下機能評価法として期待される. |
脳画像と摂食嚥下障害 |
山脇 正永 |
摂食嚥下障害のパターンや予後は病変部位と大きく関連している.病変部位の確認には頭部CTや頭部MRIが頻用されている.今後は機能的マッピングによる摂食嚥下障害の評価が期待される. |
Ⅳ.摂食嚥下能力,摂食状況の評価 |
臨床的重症度分類(DSS) |
柴田 斉子ほか |
臨床的重症度分類(dysphagia severity scale;DSS)は,7段階からなり,臨床所見から診断できるように考えられている.各段階を判定する際の定義,解説について詳しく解説する. |
摂食嚥下能力のグレードと摂食状況のレベル |
國枝顕二郎ほか |
グレード(能力)とレベル(状況)は,チームアプローチの共通言語として使用できる.レベルはFILSとして国際的にも使用できるため,エビデンスの構築に役立つ. |
摂食状況の評価 |
谷口 裕重 |
患者が実際に摂取している栄養や調整食を簡易的に把握するためのツールとしてESS(eating status scale)とFOIS(functional oral intake scale)を紹介する. |
Ⅴ.トピックス |
オーラルフレイルと口腔機能低下症の評価 |
菊谷 武 |
オーラルフレイルといった概念を広く国民に広報するとともに,医療現場においてもその対策が始まっている. |
食道機能の評価―摂食嚥下障害に関連する食道機能の障害とその評価法を中心に― |
栗林 志行ほか |
高解像度食道内圧測定(high-resolution manometry;HRM)が開発され,HRMを用いたシカゴ分類が食道運動障害の診断に広く使用されている. |
海外で用いられる評価法 |
兼岡 麻子 |
海外で広く使われている摂食嚥下障害の評価法の中から,V-VST,TOR-BSST©,MBSImPの概要と実施手順,留意点などをまとめた. |
フレイル・サルコペニア |
近藤 和泉ほか |
フレイルの概念と要介護状態になる原因としてのフレイル,サルコペニアの定義と評価,回復期リハビリテーション病棟における栄養評価についてまとめた. |
Ⅵ.評価とアプローチの実際:症例報告 |
頭頚部がん治療後の摂食嚥下障害―評価とアプローチの実際― |
二藤 隆春ほか |
頭頚部がん治療後に生じる摂食嚥下障害では,治療の進行状況に合わせて,早期からの詳細な機能評価,状態に応じた摂食嚥下訓練,代償手段の指導を行う. |
高解像度マノメトリーによる評価が有効であったWallenberg症候群の1例 |
蛭牟田 誠ほか |
高解像度マノメトリー,嚥下造影検査で重度Wallenberg症候群患者の咽頭内圧,UES圧,食塊通過などを評価した.これらの情報をもとに間接訓練,直接訓練を実施し,全量経口摂取に至った. |
慢性期嚥下障害 |
粟飯原けい子ほか |
慢性期で重度の嚥下障害患者を認めたが,治療指向的評価による詳細な病態把握および,適切かつ十分量の訓練によって全量経口摂取に至った. |