I.疫 学 |
<総 論> |
脆弱性骨折の定義 |
山本 智章 |
脆弱性骨折は多くの場合に骨粗鬆症および生活習慣病に関連した骨折のことを指す.その用語の変遷や骨粗鬆症および脆弱性骨折の定義につき述べた. |
脆弱性骨折の疫学 |
築谷 康人ほか |
近年の骨粗鬆症治療の進歩により,我が国でも脆弱性骨折の発生率が低下する兆しが認められてきた.本稿では主要な脆弱性骨折(非定型骨折も含む)の疫学的な背景について述べる. |
II.骨折の臨床,画像診断の進歩 |
CT有限要素解析を用いた骨強度評価 |
金子 雅子ほか |
立体構造を加味したCT有限要素解析を用いた骨強度値は,骨粗鬆症の診断のみならず,治療効果判定にも有用な検査方法である |
MDCT,HR-pQCTによる骨構造,骨脆弱性の新しい画像評価 |
千葉 恒ほか |
HR-pQCTは,ボクセルサイズ61 μmの高い解像度をもつ四肢用CTのことであり,ヒト生体に対する骨微細構造の非侵襲的な解析が初めて可能となった. |
単純X線,MRIでの診断や治療経過での推移について,偽関節も含めて |
杉田 誠ほか |
単純X線では立位(坐位)と仰臥位側面像の比較による椎体内不安定性の検出が診断に有用である.MRIは単純X線で検出されない椎体骨折の診断に有用である.骨癒合の判定は慎重に行う必要がある. |
III.骨折の臨床,手術療法 |
<椎 体> |
骨粗鬆症性椎体骨折に対する保存治療(EBMと治療のコツ) |
豊田 宏光ほか |
骨粗鬆症性椎体骨折の保存療法に関するEBMは海外の論文を参考にしても乏しい.予後を予測して予後不良因子をもった患者に対して選択的かつ強力な医療介入を行うことが重要である. |
骨粗鬆症性椎体骨折偽関節に対する手術療法 |
柏井 将文 |
椎体骨折後偽関節や遅発性運動麻痺に対する外科治療を行う際には,患者の健康状態(他の併存疾患の存在など)や骨粗鬆症の重症度を術前に十分評価して術式選択を行うことが求められる. |
<橈骨遠位端> |
高齢者の橈骨遠位端骨折を治療するうえで一番大切なことは何か? |
高畑 智嗣 |
高齢者橈骨遠位端骨折の治療で一番大切なことは機能評価と患者満足を目標にすることで,X線学的評価を目標としてはいけない.大部分は保存療法と小侵襲手術で治療できる. |
<上腕骨近位端> |
高齢者の上腕骨近位端骨折を治療するうえで一番大切なことは何か? |
寺田 忠司 |
上腕骨近位端骨折手術において重要なことは,主骨片間における骨性コンタクトを獲得する整復位であり,インプラントはあくまでも,整復位を補助するためのツールにすぎない. |
<大腿骨転子部> |
高齢者の転子部骨折を手術するうえで一番大切なことは何か? |
塩田 直史 |
早期手術を行う必要性を説明するとともに,メリット・デメリットを十分説明し,同意を得ることが求められる.本稿ではその詳細を述べる. |
大腿骨転子部骨折:カットアウトの防ぎ方 |
小林 誠 |
ラグスクリューは骨頭の中心に設置すべきである.後内側支持があって正面像が内方型ならそのままの形で固定して良い. |
<四肢骨その他> |
脆弱性骨折に対するイリザロフ創外固定の有用性 |
野坂 光司ほか |
骨粗鬆症高齢者の脆弱性骨折に対するイリザロフ創外固定の有用性と荷重の重要性について述べる. |
IV.再骨折を防ぐための本当に有効な骨粗鬆症治療 |
整形外科医は脆弱性骨折予防・治療に真摯に取り組んでいるか |
宮本 俊之 |
多くの整形外科医は骨粗鬆症予防と治療ガイドラインを知ってはいるが,実行しているかを常に意識しながら日頃の診療に取り組まなければならない. |
脆弱性骨折例の疼痛発生機序と疼痛管理 |
射場 浩介ほか |
脆弱性骨折に伴う疼痛発生の原因として,骨折自体の疼痛以外に,骨折後の骨格変形や偽関節によるもの,骨粗鬆症自体によるもの,外固定や手術後の不動化と非荷重による局所性の骨粗鬆化によるものがある. |
骨粗鬆症を伴う脊椎インストゥルメンテーション手術に固定強化を目指した薬物治療 |
大鳥 精司ほか |
骨粗鬆症を伴う脊椎インストゥルメンテーションに術前からテリパラチドを使用することで手術中のペディクルスクリューのトルク値の増強,術後のペディクルスクリューの緩みの減少,さらに骨癒合の促進効果が見出された. |
四肢骨折に対する骨折治癒促進を考慮した薬物治療 |
岩田 憲 |
症例供覧では保存療法2例,手術療法2例を多数の画像を交えて紹介しテリパラチドの効果を検証している. |