認知症の疫学とMCI |
葛西 真理ほか |
認知症およびMCIの概念と定義,また疫学調査として大崎-田尻プロジェクトを紹介し,認知症の有病率および発症率について述べる. |
認知症診断のポイント |
丸山 哲弘 |
種々の認知症を診断するうえで診断基準は不可欠であるが,それを十分使いこなすためにはかなりの習熱が必要である.日常診療において認知症の専門医は経験に基づいた直感的センスでかなりのところまで鑑別診断を絞り込み,神経心理学的検査や画像診断を補助的手段として利用している.直感的センスを習得するには診るコツがあるため,今回主な認知症診断のポイントを診断基準を中心に解説した. |
血管性認知症について |
福井 俊哉 |
新しい概念であるvascular cognitive impairmentの定義に一致をみていない点,血管性認知症とアルツハイマー病では認知症の内容が異なる点,一方,血管性認知症とアルツハイマー病が多くの共通点を有することなどを強調した. |
変性性認知症―アルツハイマー病について |
大川原 浩ほか |
アルツハイマー病はその経過において認知機能障害のほか,様々な精神症状を呈する疾患である.症状,病期,診断,治療について概説した. |
変性性認知症―レビー小体を伴う認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)について |
今村 徹 |
DLBの中核症状を中心とする臨床症状とその評価法を解説した. |
変性性認知症―前頭側頭型認知症について |
兼田桂一郎ほか |
精神症状や行動障害の著明な前頭側頭型認知症では,常同行動や被影響性の亢進などの行動障害を逆手にとって,リハビリテーションやケアに利用することが重要である. |
認知症をきたしうる内科疾患 |
大貫 知英ほか |
一般に認知症と思われている方のなかには内科疾患を原因とする認知症症状も含まれており,正しく診断,治療を行うことにより治療可能なものである可能性があるため,注意を要する. |
Treatable dementia―手術で治る認知症 |
西林 宏起 |
適切な治療で可逆的に認知症様症状が改善するtreatable dementiaなる疾患群のなかで,主に脳神経外科領域疾患について概説する. |
認知症診断のためのツール:髄液,血液ほか |
浦上 克哉ほか |
髄液中リン酸化タウ蛋白は,単独で感度,特異度ともに80%以上を示し,ADの確定診断のためのツールとして役立つ.ADとタウオパチーの鑑別には髄液中WGA結合糖蛋白の測定が有用と考えられる.髄液診断ツールに至るまでのスクリーニングツールとして,血液中WGA結合糖蛋白の測定とタッチパネル式コンピューターを用いた認知症の簡易スクリーニング法がある.薬剤の有効性の予知のための診断ツールとして,アセチルコリンレセプターα7の遺伝子多型の解析がある. |
認知症診断のためのツール:電気生理学的検査 |
田中 秀明ほか |
一般臨床における認知症診断のためのツールとしての脳波の読影に際してのポイントならびに最新の話題として,脳波・事象関連電位を用いた認知症早期診断の取り組みにつき紹介する. |
認知症の診断と評価:神経画像診断 |
松田 博史 |
認知症の画像診断では脳血流SPECTとMRIが主に用いられる.視覚評価による早期診断や鑑別診断は困難であり,画像統計解析手法の理解と応用が必須である. |
認知症の診断と評価:神経心理学的検査 |
種村 純 |
認知症では多彩な神経心理症状が出現する.最近,病前知能を推定するために,難読文字の音読検査が開発された.記憶機能ではエピソード記憶とワーキング・メモリに障害が強く,言語機能では喚語困難が出現する.障害の程度と特徴に合わせた神経心理学的検査の適用方法について述べた. |
認知症のBPSDとADL |
博野 信次 |
認知症で生じる認知症の行動および心理症候(BPSD)と日常生活活動(ADL)の障害を評価することの重要性とそれらの評価の仕方について理解して頂きたい. |
認知症の薬物療法 |
川畑 信也 |
認知症の3大原因疾患(アルツハイマー病,脳血管性認知症,レビー小体型認知症)に対する薬物療法について解説する.脳血管性認知症にみられるうつ病・抑うつ状態と精神病症状の薬物療法の実際を述べる. |
認知症に対するリハビリテーション的アプローチ |
大沢 愛子ほか |
認知症に対するリハビリテーション的アプローチを施行する際には,正確な病態診断と詳細な評価および適確な治療プログラムの構築が不可欠である. |
認知症リハビリテーションの方法論 |
若松 直樹ほか |
認知症のリハビリテーションでは,記憶障害を踏まえたうえで,各スタッフが認知と情動の両面へ働きかけ,より客観的な効果評価を行うことが求められている. |
認知リハビリテーションの実際1―個別訓練で行っていること― |
吉村 貴子ほか |
認知リハビリテーションの実際について,入院・外来の個別訓練で行っていることについて解説した. |
認知リハビリテーションの実際2―グループ訓練の意義と効果について― |
関口 恵利ほか |
認知症の認知リハビリテーションは,可能な限りの認知機能改善を目指しつつ,患者,家族が今まで通りの生活を維持できるよう,多岐にわたるアプローチを行うことが必要である. |
認知症に対する社会支援 |
樫林 哲雄ほか |
認知症に対する社会支援として,平成18年4月に予防重視型のシステムへ転換された介護保険制度のサービス利用について概観し,成年後見人制度や権利擁護についても解説した. |
認知症と家族 |
関口 恵利ほか |
「認知症」と診断されたとき,その家族の心理的負担は計り知れないものがある.認知症を抱えながら懸命に生活を営む患者とその家族・介護者の声を紹介する. |