I.美容治療の基礎 |
角層・表皮の機能 |
林田 清芽ほか |
角層の機能の中心であるバリア機能と水分保持機能は,角層細胞間脂質や天然保湿因子だけではなく,ヒアルロン酸やグリセリン,接着因子などもかかわっていることが分かってきている. |
真皮の機能 |
今山 修平 |
骨・筋・内臓からなる内部諸臓器を,最も効率的な表面積に収容することにより,その動物の容姿を整える臓器が皮膚であり,そのための張力(膠原線維)と収縮力(弾力線維)を発揮するのが真皮結合組織である. |
経皮吸収について |
木村 文子ほか |
美容の分野において,皮膚を介した薬物や化粧品の送達システムの取り組みや実用化は進歩している.皮膚科医としてその基本や原理を十分に理解することが必要である. |
皮膚免疫・アレルギーについて |
小林 美和 |
美容皮膚科診療を行ううえで,知っておくと役に立つ免疫学的知見を紹介する. |
法的規制について |
三輪 亮寿 |
紛争と訴訟の項では「美容医療分野の特色」を,自家製剤とケミカルピーリングの項では「薬事法規との関係」に注目していただきたい. |
II.治療法の選択 |
スキンケア |
田上 八朗 |
過去の軟膏療法から発展してきた保湿外用剤の反復塗布は,乾燥した病変部角層に水分を補い,軟らかく滑らかな皮膚に戻すだけではなく,角層のバリア機能の障害をも修復することにも働く. |
シミ治療 |
溝口 昌子 |
シミ治療は,外用美白剤,レーザー療法を主として,内服薬やケミカルピーリングを組み合わせる.シミにはさまざまな病態があり,治療前の正しい診断と治療法の選択が大切である. |
しわ治療 |
乃木田俊辰 |
しわに対する治療法全般を紹介し,トレチノイン外用,ケミカルピーリング,レーザー,ヒアルロン酸注入,LED照射装置の作用機序と方法について概説した. |
挫瘡・瘢痕 |
北野 幸恵 |
高濃度TCAを挫瘡後陥凹にピンポイント塗布するCROSS法は陥凹部への組織誘導方法として有用である. |
酒査―毛細血管拡張の治療を中心に― |
中川 浩一 |
酒査に伴う毛細血管拡張には,ダイレーザー照射が一般的である.しかし,高周波ラジオ波メス(サージトロン®)も,これに替わる器械として有用である. |
黄色腫 |
立花 隆夫 |
本症患者の2/3は必ずしも高コレステロール血症を呈さないが,治療の順序としては,まず食事療法などの生活指導を行い,次にプロブコール内服による保存的治療,さらに外科的治療へと進む. |
老人性角化腫,アクロコルドンなどの小腫瘤 |
岩澤うつぎ |
老人性角化腫,アクロコルドンなどの小腫瘤に対し,液体窒素,尖刀での切除,レーザーなどのメスを使わない治療法を紹介した. |
ネイルケアとリペア |
上出 康二 |
爪甲と周囲の過剰角質の除去,キューティクルケア,適切なトリミングとファイリングが重要.ジェルとグルーを用いた爪甲形成が爪治療の応用範囲を広げる. |
脱毛・多毛 |
中村 元信 |
男性型脱毛症は内服フィナステリドの処方が可能になり治療の選択肢が増えた.円形脱毛症も治療ガイドラインが作成されているが,女性のびまん性脱毛症の病態解明,治療法の開発はあまり進んでいない. |
III.治療のコツ |
レチノイド |
菊地 克子 |
レチノイドは,光老化皮膚に対してrejuvenation効果がある.本剤をベースに色素性病変に対してはハイドロキノンなどを併用する方法が効果的である. |
ケミカルピーリング |
米井 希ほか |
炎症性挫瘡,肝斑にピーリング治療を行う際に念頭に置くべき注意点を中心に,最浅層ピーリングの実際的なコツについて述べる. |
レーザー |
林 洋司 |
疾患により使用するレーザーは異なり,また症例ごとにパラメーターの設定も変える必要がある.的確な診断力と豊富な治療経験に基づいた照射方法の工夫が重要である. |
Photodynamic therapy |
松本 義也ほか |
5-aminolevulinic acid(ALA)を用いたPDTは表在性皮膚悪性腫瘍や尋常性挫瘡,サルコイドーシスなどに有効である.今後は各皮膚疾患に,より適した治療方法の確立が必要である. |
美白剤―シミの外用療法― |
関東 裕美 |
シミ治療を始める前に外用療法が有効かどうかを的確に診断する.治療に際しては美白外用剤,化粧品の作用と問題点を把握してより安全で有効な治療を心がけたい. |
電気凝固・冷凍凝固での治療 |
田村 敦志 |
電気凝固・冷凍凝固は表在性皮膚病変を対象に,多くの施設で簡便に実施できる治療である.対象疾患と症例を選択すればレーザーや光治療器に劣らない結果が得られる. |
内服薬・サプリメント |
小林 裕美 |
肝斑・炎症後色素沈着,および挫瘡に用いられる内服薬・サプリメントについて,これまでの報告を基に概説した. |
IV.美容治療 EBMからの検証 |
シミ治療(肝斑) |
船坂 陽子 |
難治性の色素異常症である肝斑の治療法に関して,エビデンスのレベルおよび質に基づいて概説した. |
しわ治療 |
薄木 晶子ほか |
しわ治療をエビデンスの質が最も高いとされるランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)を基に評価した. |
挫瘡治療 |
林 伸和 |
挫瘡は患者の感情に与える影響が大きい疾患である.むやみにエビデンスの不十分な新しい治療を行うのではなく,患者の心理状態に配慮しながら,合理的な根拠に基づく治療を適切に実施することが,重要である. |
美容治療の今後の展望~皮膚科医より |
大原 國章 |
美容治療は,一般社会からの要求に応じた時代的な必然である.にきび治療を例に挙げて論じた. |
美容治療の今後の展望~内科医より |
半田 修ほか |
内科医が関与しうる美容治療は内科疾患を治療ターゲットとするが,皮膚病変に対する診断が重要で早期からの皮膚科専門医との連携が不可欠である. |
美容治療の今後の展望~化粧品メーカーより |
長沼 雅子 |
化粧品の定義の理解と,日常のスキンケア(保湿や紫外線防止)のアドバイスのキーポイントを例示. |
美容治療の今後の展望―アンチエイジングドック― |
山田 秀和 |
アンチエイジングドックの概略を解説しDermoporosisに対応するには,老化をトータルで計測し,皮膚における内的老化,外的老化をみる必要がある.また食事,運動,サプリメントなどの指導法について説明した. |
☆ コラム ☆ |
注入治療の問題点 |
宮崎 孝夫 |
お手軽な治療であっても,問題が生じると思わぬ事態を招くことになる.「思わぬ事態」とその内容や予防について記載したので,日常診療の御参考にしていただきたい. |
美容治療は皮膚癌の発生を予防できるか? |
大日 輝記 |
美容治療が発癌にどのような影響を与えうるのか,これまでの皮膚癌の予防戦略について整理したうえで,美容治療がもたらす新しい皮膚癌予防法の可能性とリスクについて紹介する. |
化粧品と美容治療 |
宮地 良樹 |
今後,抗加齢・美容治療の領域では,効能効果を有する機能性化粧品が皮膚科医の重要な治療ツールとなろう. |