I.Surgical Site Infection(SSI)の予防 |
SSIの感染経路 |
鳥居 良昭ほか |
近年注目されている内因性感染に関してはいまだ不明な点が多い.内因性感染による感染経路が解明されれば,手術部位感染発生率をさらに減少させることが可能になる. |
MRSA保菌者対策 |
竹末 芳生ほか |
脊椎インストゥルメンテーション手術,人工関節置換術において,MRSAだけでなく黄色ブドウ球菌によるSSI対策として,術前黄色ブドウ球菌保菌チェックを行い,陽性者では除菌などのケアバンドルを実施する. |
術後感染予防抗菌薬適正使用(VCMパウダーを含む) |
山田 浩司ほか |
SSI予防のなかでも予防抗菌薬投与の適正使用は特に重要な対策である.本稿では,整形外科領域で特に有用と考えられる国内外複数のガイドラインを紹介し,その概要と問題点を整理しながら,本邦で推奨される対策について紹介していく. |
SSIの予防対策―ポビドンヨード水溶液による術野洗浄 |
阿部 哲士 |
整形外科清潔手術に対して,近年改訂されたCDCやWHO,SHEA/IDSA,APSICガイドラインなどではポビドンヨード水溶液による術野洗浄を推奨している. |
SSI予防―最近の話題― |
正岡 利紀ほか |
SSI予防には医療スタッフ全員が細心の注意をもって感染防御に取り組む姿勢が重要であり,関連する患者側因子と医療側(手術室環境等)の因子のうち近年話題となっている項目につき概説した. |
周術期管理センターの取り組み |
小林 求 |
多職種チーム医療で術前から介入することによって,血糖管理や喫煙などのSSIに影響する内因性因子を改善し,SSI発生のリスクを軽減できる可能性がある. |
四肢長管骨開放骨折におけるSSIの予防 |
石井 桂輔 |
開放骨折における創感染の予防には,早期の抗菌薬投与,洗浄およびデブリドマンが重要である.また近年,開放創局所への抗菌薬投与の有用性が注目されている. |
SSIサーベイランスのすすめ |
大野久美子ほか |
統一された定義,追跡期間,診断法を用いて適切な整形外科手術領域のSSI(surgical site infection)サーベイランスを行うことはSSI率を改善する可能性がある. |
SSI予防ガイドライン―世界の動向 |
森兼 啓太 |
2016年から2017年にかけて3つのSSI予防ガイドラインが発行された.それらにおける勧告内容や推奨の強さに相違がある箇所が少なくない.本稿ではそれらを比較した. |
II.Surgical Site Infection(SSI)への対応 |
人工関節周囲感染(periprosthetic joint infection:PJI)の診断 |
小林 直実ほか |
PJIの診断基準,診断アルゴリズムの基本,原因菌の特徴について概説し,培養陰性例などに対する対応も含めてPCR法や新しいバイオマーカー,超音波処理の意義について解説する. |
インプラント術後SSIへの対応―デブリドマン,モジュラー・コンポーネント交換,抗菌薬の適正使用によるインプラント温存(DEAR)の試み― |
遠藤 渉ほか |
緩みのないインプラント術後感染では,DEAR(débridement, exchange of modular component, antibiotics, and retention of implant)によりインプラントを温存できる可能性がある. |
感染人工膝関節におけるインプラント温存のための工夫 |
菊地 忠志 |
感染TKAの治療において,掻爬術後に組織移行性の良い抗菌薬を効果的に使用することで,骨融解を伴う慢性感染と耐性菌による感染に対しても,インプラントの温存が可能であった. |
感染人工股関節に対する対応―ステムを温存するための工夫 |
大谷 卓也ほか |
慢性PJIに対し,強固に固定されたセメントレスステムを温存し,骨盤側に関節機能を持たせた人工臼蓋様ALACを作製して行う二期的治療法につきその実際を解説する. |
感染人工膝関節への対応 |
井上 紳司ほか |
PJIの治療は,感染診断アルゴリズムに基づき診断を確実に行い,最初の処置を万全の準備で対処し,身体状態を考慮した妥協のない治療を選択すべきである. |
感染人工股関節に対する治療法 |
䯨 賢一ほか |
人工関節周囲感染の治療は,洗浄・デブリドマン,一期的再置換術,二期的再置換術等の選択肢があり,症例ごとに使い分ける必要があるが正しく治療すれば寛解率は90%以上である. |
脊椎インストゥルメンテーション手術の術後感染に対する予防・診断・治療 |
中嶋 香児ほか |
脊椎インスト手術では,エビデンスに基づいた予防をしっかり行うことで著明なSSI予防効果が得られる.治療は何よりも原因菌の同定が重要であり,適正な抗菌薬投与とデブリドマンが基本である. |
骨接合後感染に対するiMAP,iSAP法による治療―最小限の掻爬で,インプラントを温存する戦略― |
圓尾 明弘 |
骨接合後の深部感染において,iMAPは骨髄に,iSAPは軟部組織に抗菌薬を高濃度持続投与する手法であり,最小限の掻爬でインプラントを温存して感染の制圧が可能である. |
骨軟部腫瘍術後感染への対応 |
森井 健司 |
骨軟部腫瘍術後感染は発生率が高く,難治性であるが,悪性骨軟部腫瘍は症例数が少なく,知見の集積が困難な分野である.対応法は多彩であり,症例の特性とリスクを理解して選択することが重要である. |
抗菌薬含有骨セメントビーズ・骨セメントモールドスペーサー |
森田 充浩 |
抗菌薬の選択,複数の抗菌薬の組み合わせ方,セメントビーズ・セメントモールドスペーサーの各々のメリット・デメリットを理解したうえで治療に用いることが感染沈静化への成功の秘訣となる. |
骨・関節感染症に対するオゾンナノバブル水を用いた持続洗浄療法と高気圧酸素治療 |
川嶌 眞之ほか |
強力な殺菌力を長期間持続するオゾンナノバブル水と副作用が極めて少ない高気圧酸素治療の併用による治療方法について化膿性骨髄炎を中心に記載した. |
骨感染症における抗菌薬の選択 |
松下 和彦ほか |
黄色ブドウ球菌は,宿主の細胞外のみで増殖できる細胞外寄生菌であるとともに細胞内寄生菌でもある.黄色ブドウ球菌による骨感染症で抗菌薬を選択する際は,骨芽細胞内移行性も考慮する必要がある. |
抗MRSA薬の使い方:LZD |
酒巻 一平ほか |
MRSAを原因菌とする整形外科領域SSIに対するLZD使用の際には長期投与となることが多く血小板減少に注意を要するが,減量あるいはRFPとの併用を用いることで長期投与可能となる症例がある. |
抗MRSA薬の使い方:DAP―整形外科領域術後感染症(人工関節周囲感染を含む)に対するDAPの有効性と安全性― |
内山 勝文ほか |
DAPは整形外科領域感染に対して有効な薬剤と考える.投与量は6~8mg/kg,1日1回投与であるが,保険適用外であることやCPKの上昇などに注意が必要である. |
抗MRSA薬の使い方:LZDとDAPのサイクリング療法 |
今林 英明 |
MRSAによるSSIではLZDを中心とした薬剤治療を考慮する.血小板数が20%低下を休薬基準とし,休薬中はDAPへ変更する.血小板回復後LZD再投与するサイクリング療法が推奨される. |
整形外科医に必要な基礎知識:感染症診断・治療のABC |
國島 広之ほか |
丁寧な病態評価,ならびに血液培養の2セット採取,培養検査,同定・薬剤感受性の解釈,de-escalationなどについて理解する. |
整形外科医に必要な基礎知識:嫌気性菌・真菌感染症の診断と治療 |
小泉 祐介ほか |
・嫌気性菌は酸素曝露で死滅し得るため検体採取後直ちに培養開始する必要がある.
・真菌感染症は患者のリスク因子を把握することで想定可能である.治療には長期間を要する. |
抗菌インプラント:銀HAコーティング人工股関節 |
河野 俊介ほか |
Ag-HAコーティングセメントレス抗菌人工股関節は,抗菌性能と骨固定性能を併せ持ち,銀皮症等の銀毒性に依存する問題を克服し生体内で安全に使用できる画期的なインプラントで,術後感染予防に寄与することが期待される. |
抗菌インプラント:ヨードコーティングインプラント |
白井 寿治ほか |
ヨードコーティングインプラントは,基礎的および臨床的研究において,十分な抗菌性と高い生体安全性を有しており,手術部位感染に対して非常に有用性が期待できる抗菌インプラントである. |
バイオフィルム感染症の基礎と臨床 |
藤村 茂ほか |
バイオフィルム形成ブドウ球菌属によるインプラント関連感染の抗菌化学療法はエビデンスが少ないが,抗MRSA薬にクラリスロマイシンやリファンピシンの併用などが検討されている.ただし,不適切使用は避けなければならない. |
整形外科術後感染に対する陰圧閉鎖療法(NPWT)の応用 |
鈴木 卓 |
整形外科分野での陰圧閉鎖療法の応用として,海外で主として行われている手術部位感染の予防と感染創治療に対する使用法について概説する. |