I.上眼瞼の退行性(加齢性)疾患 |
1) 眼瞼下垂症 |
挙筋腱膜(levator aponeurosis)の利用を主体とした眼瞼下垂症手術 |
野間 一列 |
退行性眼瞼下垂に対する挙筋腱膜のみを前転する術式の限界,および腱膜の大量前転によって生じる眼科的問題点について述べた. |
結膜円蓋部ミュラー筋の利用を主体とした眼瞼下垂症手術 |
江口秀一郎 |
炭酸ガスレーザーの眼瞼下垂手術への導入と経皮的ミュラー筋タッキング手技の改良により,小切開,低侵襲で眼瞼組織同定の容易な眼瞼下垂症手術が可能となった. |
挙筋腱膜とミュラー筋の両方を利用した眼瞼下垂症手術 |
矢部比呂夫 |
退行性の眼瞼下垂においては,術前評価で手術すべき標的組織を確定した上で術式を選定することが筆者の眼瞼下垂へアプローチする基本的なスタンスである.本稿では筆者が開発した生体染色法やクロコダイルクランプを用いた挙筋腱膜分離法を含めて紹介する.手術に際しては顕微鏡下に確実にシート状の膜として眼窩隔膜やミュラー筋から剥離・分離する手技が重要である. |
眼窩隔膜を利用した眼瞼下垂症手術 |
杠 俊介ほか |
加齢に伴う腱膜性眼瞼下垂症に対する挙筋腱膜の連続である眼窩隔膜と瞼板を固定する手術の詳細を述べた. |
眼瞼下垂症における前頭筋吊り上げ術 |
角谷 徳芳ほか |
人工素材により一過性の経過観察を行うことは有効な手段である.自家組織移植は長期効果が期待される. |
2) 皮膚弛緩症 |
退行性上眼瞼皮膚弛緩症に対する眉毛下皮膚切除術 |
村上 正洋 |
眉毛下皮膚切除術の本来の目的は整容的改善であるが,機能的障害を呈する高齢者の退行性上眼瞼皮膚弛緩症に対しても,本法は非常に有用性の高い術式であることを報告する. |
重瞼部皮膚切除法 |
矢吹雄一郎ほか |
重瞼部皮膚切除法は眼瞼部の手術において最も一般的な手法の一つであるが,皮膚余剰の程度や部位は個人差が強く,安定した結果を得るのは難しい.また,術式も様々であり意見の分かれるところは多い.今回,我々が以前より行っている定量的な評価に基づいた手法を報告する. |
うわまぶたのたるみを主訴とする症例に対する眉毛挙上術―退行性皮膚弛緩症に対する眉毛挙上術― |
宇田 宏一ほか |
顔面上1/3全体を1つのユニットとして捉え,皮膚弛緩の状況に応じて上眼瞼の形成に加えて眉毛挙上術を積極的に取り入れる.これがcosmetic outcomeの向上,つまり自然で明るい表情を得る重要なポイントである. |
II.下眼瞼の退行性(加齢性)変化 |
1) 内反症 |
Hotz法を主体とした内反症手術 |
鹿嶋 友敬 |
睫毛内反・眼瞼内反がどのような病態で発症するのかを述べ,各々の治療法を示す.具体的には皮膚弛緩を伴った睫毛内反に対してHotz変法を行い,睫毛の向き自体が変化している睫毛内反には瞼縁切開を併用したHotz変法を行う. |
眼輪筋短縮術を主体とした内反症手術 |
矢部比呂夫 |
眼輪筋短縮術は退行性下眼瞼内反症に対するオプションの1つであり,他の手術手技と組み合わせて手術することで再発の少ない手術効果が期待できる.本稿では,眼瞼組織の前葉,後葉の水平・垂直方向の弛緩の状態を診断する方法につき述べ,手術適応となる症例選択,その術式と関連術式について述べる. |
Lower eyelid retractors’ advancementによる下眼瞼内反症手術 |
柿崎 裕彦 |
Lower eyelid retractors’ advancementは,下眼瞼の垂直方向だけでなく,その水平方向や眼輪筋隔膜前部の瞼板前部への乗り上げも同時に矯正する術式であり,再発率は2%程度である. |
牽引筋腱膜縫着術と眼輪筋短縮術を併用した下眼瞼内反症手術 |
村上 正洋 |
筆者は退行性下眼瞼内反症の治療に牽引筋腱膜縫着術を用いてきたが,長期観察では再発例をしばしば経験した.そこで,現在は本法に眼輪筋短縮術を追加し,長期成績の向上を試みている. |
2) 外反症 |
Lateral canthoplastyによる下眼瞼外反症手術 |
柿崎 裕彦 |
Lateral tarsal strip procedureは,lateral canthoplastyによる下眼瞼外反症手術のgold standardとして行われる術式である. |
瞼板短縮術による外反症手術 |
野田 実香 |
瞼板短縮術は,眼瞼の横方向の弛緩によって生じる下眼瞼外反症に対して有効な術式である.外反の強い部位にポイントをしぼって治療できること,手技が比較的容易であることが利点である. |
軟骨移植による外反症手術 |
板倉 秀記ほか |
下眼瞼は眼表面に常に接触している組織であり,その再建は整容的のみならず,その解剖学的特徴に留意し,眼表面保護および視機能などの機能的側面も考慮した術式が選択されるべきである. |
III.退行性(加齢性)眼瞼疾患の手術における注意事項 |
眼瞼手術におけるエステティックマインド |
佐藤 英明ほか |
上下眼瞼手術は,眼瞼のみに捕われず,周囲組織の状態にも気を配るべきである.眼瞼の手術においては形態,機能の両方が改善しないと満足が得られにくいものであることを常に念頭に置いて手術に臨む必要がある. |
オキュラーサーフェスからみた注意点 |
吉野 健一 |
眼瞼とオキュラーサーフェスの関係,およびドライアイの病態生理を理解し,手術時の注意点,眼瞼手術後の不定愁訴の予防と治療につき眼科医の立場から述べる. |
眼瞼・眼窩周囲組織に対する手術時の注意点 |
柿崎 裕彦 |
眼形成外科手術の合併症は,眼瞼・眼窩の解剖学的理解の無知から生じる合併症と,眼瞼と眼表面との関係の無理解に起因する合併症に大別される. |