I.よく遭遇する疾患(代表的疾患) |
筋損傷 |
向井 直樹 |
筋損傷には筋挫傷と肉離れがある.肉離れではMRI所見が治療の選択に繋がることがわかり,有用性が高い.重症度によって復帰プログラムが異なるため,客観的で的確な判断が必要である. |
上肢の捻挫(靱帯損傷) |
船越 忠直ほか |
上肢捻挫(靱帯損傷)の保存加療の適応について総論と各論に分け概説した.不安定性の評価に加え,X線,CT,MRI,超音波などを用いて保存療法の適応を決める必要がある. |
下肢の捻挫(靱帯損傷) |
中嶋 耕平ほか |
下肢の捻挫として受傷頻度の高い,足関節と膝関節の捻挫(靱帯損傷)の受傷機転,診断,治療について述べた.初期の対応が治療経過に影響するため,適切な診断と治療が必要である. |
II.部位別疾患 |
肩の外傷 |
石田 康行ほか |
日常診療でよく遭遇するスポーツ外傷である肩関節前方脱臼,腱板断裂,肩鎖関節脱臼の初期治療のトピックスと手術適応について論述した. |
肩の障害 |
原 正文 |
肩のスポーツ障害の病態は,筋疲労や筋力低下,関節唇損傷,internal impingement,炎症などである.診察法は,体幹下肢からはじめ,肩関節は理学所見11項目で医学的評価を行う.治療原則は,適切な理学療法を中心とした保存療法である. |
肘の外傷 |
戸祭 正喜 |
肘関節のスポーツ外傷における診断と初期治療のポイントと注意点について記述した. |
肘の障害 |
原田 幹生ほか |
野球選手の代表的な野球肘は,内上顆裂離,内側側副靱帯損傷,尺骨神経障害,離断骨性軟骨炎,および肘頭骨端離開・骨端線閉鎖不全・疲労骨折である.外上顆炎は,中高年のテニス愛好家に多い. |
手関節・手の外傷 |
副島 修ほか |
スポーツによる手指外傷の治療に際して,早期復帰可能な治療選択が原則であるが,選手の状況や希望に応じて治療を待機せざるを得ない場合もあり,その間の選手・トレーナーへの指導も重要となる. |
手関節・手の障害 |
麻生 邦一 |
スポーツ競技のどのような動作,プレーで障害が生じるのかを考えるべきであり,そのためにはそのスポーツ種目について熟知すること,および手・手関節の機能解剖を理解することが肝要である. |
脊椎の外傷 |
三原 久範ほか |
スポーツによる脊椎外傷には重症例も含まれ,初期治療の是非が予後を大きく左右する可能性がある.スポーツ種目によって好発部位や特徴的な損傷型があるので,治療法を含めて解説した. |
腰椎分離症 |
竹林 庸雄ほか |
腰椎分離症は,発育期の運動選手では40%以上と高率に発症し,偽関節に至る例も少なくない.発症早期であれば骨癒合が期待できるため,腰部伸展時痛などの臨床所見に注意し早期に診断する. |
腰椎椎間板ヘルニア |
麻殖生和博ほか |
スポーツ選手の腰椎椎間板ヘルニアに対して低侵襲な治療が求められてきた.内視鏡手術は従来法に比べて低侵襲であり,早期リハビリテーションを可能にし,ひいては早期スポーツ復帰を可能にした. |
骨盤・股関節・大腿の外傷 |
澤口 毅 |
筋付着部裂離骨折は通常,保存療法で良好な結果が期待できる.骨盤骨折では骨盤輪の安定性が重要である.股関節部の骨折では,骨頭温存と股関節機能の再建が重要である. |
骨盤・股関節・大腿の障害 |
仁賀 定雄ほか |
骨盤・股関節周辺の痛みの診断,治療を行うために必要な鑑別診断のポイントと,器質的な外傷・障害を除外診断したうえで行う鼡径部痛症候群の診断について概説する. |
膝の外傷 |
王寺 享弘 |
膝関節のスポーツ外傷では,靱帯損傷,半月板断裂,膝蓋骨脱臼,軟骨損傷などを念頭に置く.外傷性の関節血症ではまず頻度の高いACL損傷を疑い,受傷機序からある程度の診断をすることも必要である.スポーツ外傷では正確な診断のもとで的確な治療を行い,なるべく早くスポーツ現場に復帰させることが肝心であり,かつ選手への精神的なサポートも必要である. |
膝の障害 |
樋口 潤一 |
スポーツ障害の診断のピットフォール,スポーツ障害の治療とともに障害予防・再発予防について述べる. |
下腿の外傷・障害 |
鳥居 俊 |
下腿は筋区画内圧上昇による急性・慢性のコンパートメント症候群を起こしやすい.跳躍型疲労骨折は骨折の危険があり厳重な管理が必要である.アキレス腱痛は病変のタイプに応じた治療を行う. |
足関節・足の外傷 |
大関 覚 |
頻度の多い受傷メカニズムから内返し損傷と外返し損傷に分けて,靱帯損傷,骨折,関節内骨軟骨傷害について述べた.鏡視下手術や小侵襲手術が拡大している. |
足関節・足の障害 |
熊井 司 |
足関節・足部にみられる代表的なスポーツ障害について,日常診療で覚えておくべき病態と診断について整理し,治療法の選択について簡単に述べる. |
III.特殊な疾患・その他 |
上肢の変形性関節症を伴う障害 |
辻野 昭人 |
上肢変形性関節症は肘関節に多く,オーバーユースによる一次性関節症と,離断性骨軟骨炎が原因の二次性関節症がある.保存療法にて滑膜炎が軽快すると,競技復帰できる例が少なくない. |
下肢の変形性関節症を伴う障害 |
池田 浩 |
膝関節痛を主訴とする変形性膝関節症と半月板損傷が混在している場合,損傷半月板が膝関節痛にどの程度関与しているかを確認する必要があり,そのためには問診,臨床症状,画像所見などから総合的に評価することが重要である. |
子どものスポーツ障害 |
松浦 哲也ほか |
子どものスポーツ障害は骨軟骨障害に特徴がある.保存療法により初期の90%以上,進行期の50%が修復するので,早期発見・早期治療が原則であり,定期的なメディカルチェックが求められる. |
女性スポーツ |
瀬尾理利子 |
女性に捻挫や靱帯損傷が多く,腰痛や下肢の障害シンスプリントや疲労骨折が多い.これらは女性の身体特徴も関与している.Female athlete triad(FAT)について理解し,診察時に早期診断,早期治療に役立てていただきたい. |
IV.治療法 |
理学療法 |
竹村 雅裕ほか |
近年,エビデンスの報告が増加している腱炎・腱症に対する遠心性エクササイズと,スポーツ現場で重要性が再認識されている体幹スタビリティエクササイズを含め,理学療法で用いられるエクササイズを概説する. |
物理療法 |
田島 卓也ほか |
物理療法は運動療法,薬物療法,装具療法などと同様に,保存療法の中核を担う治療法であり,スポーツ傷害に対しては有効である.物理療法の種類・効果,そして実際の使用法や最新の知見に関して述べる. |
テーピング―上肢 |
松田 直樹ほか |
上肢のスポーツ外傷・障害からの競技復帰においては,リスク回避,機能・能力障害に対する対策としてテーピングを使用する場面は少なくない.そのためには基本的なテーピングについての理解が必要である. |
テーピング―下肢 |
石山 修盟 |
下肢に対する基本的なテーピングを,その機能的目的と対応するであろうスポーツ現場で比較的多く見受ける傷害を表記し,その基本となる方法を紹介する. |
装具療法―上肢 |
中村 和史ほか |
上肢装具療法として肩関節,肘関節,手関節に分けて代表疾患ごとに紹介した.装具だけでは早期スポーツ復帰は難しく,適切な理学療法の併用や難治例には手術を検討することも必要である. |
装具療法―下肢 |
立石 智彦ほか |
下肢スポーツ外傷に対する治療法のなかで保存療法が選択されることも多くなってきており,装具療法の利点も知ったうえでの治療方針の決定が,近年スポーツ医には求められている. |
装具療法―腰椎(腰痛対策における) |
西良 浩一ほか |
スポーツ選手の腰痛管理における保存的治療法では装具療法が欠かせない.我々は,疾患,病態,病期に応じて3種類の体幹装具を使用している. |