Ⅰ.薬は芸術品―薬の秘密― |
内服薬編 |
今野 勉 |
OD錠と徐放剤を取り上げて,内服薬に秘められた技術的工夫を薬剤例にて紹介するとともに,この工夫に伴って生じる医療機関での取扱いや患者の服用時の留意点を解説する. |
外用薬編 |
大谷 道輝 |
外用薬は吸収を改善する目的で,多くの工夫がされている.外用薬を安全で効果的に使用するためには,これらの工夫を理解したうえで選択すべきである. |
インスリン注射製剤のトリビア |
芝田 信人 |
インスリン自体の分子的特性 インスリンアナログ体による超速効型,速効型,持効型および超持効型製剤の製剤的特性について解説する. |
Ⅱ.医療現場で気が付く服薬に関する問題点 |
1.運動障害により生じる服薬の問題点と対応策 |
内服薬 |
秋山 滋男 |
薬剤師が患者背景を考慮し,内服薬を服用している患者であり,手指に障害を有す場合の服薬支援についての対応方法について紹介する. |
外用薬・注射剤 |
岸本 真 |
点眼薬,軟膏剤・クリーム剤,湿布薬,ローション剤に対応した手軽に入手できる自助具が市販されている.インスリンの自己注射に関しては,各メーカー提供の自助具が主流であるが,現在開発中の自助具もある. |
2.嚥下障害により生じる服薬の問題点と対応策 |
嚥下機能低下による薬に関する問題点―医師の視点― |
吉松 由貴 |
嚥下機能低下は加齢や疾病,治療に伴い多くの患者に潜在する.嚥下機能の低下した患者では投薬時に問題を生じやすく,多職種で気付き,介入することが求められる. |
口腔機能・嚥下機能低下による薬に関する問題点―歯科医師の視点― |
大野 友久 |
高齢社会が進展し口腔機能が注目されているが,口腔機能や嚥下機能が低下すると薬剤を内服しにくくなることがあり,それらの機能に注意が必要である. |
嚥下機能低下による薬に関する問題点―薬剤師の視点― |
森 直樹 |
嚥下障害患者への錠剤などの服用方法として粉砕投与を検討しがちだが,薬によっては本来の特性が失われ,効果の減弱や副作用の発現・増強など悪影響を及ぼすことがある. |
経管投与時の問題点と解決策 |
新井 克明 |
嚥下障害患者に薬を経管投与する方法には粉砕法や簡易懸濁法がある.経管投与時の臨床現場での問題点とその解決策を,薬剤師が行う調剤・服薬支援を通して解説する. |
摂食嚥下機能低下時の薬の投与方法 |
倉田なおみ |
“錠剤が飲めなければつぶす”が一般的になっているが,錠剤には様々な工夫が施されているから粉砕は避けるべきである.錠剤はつぶさず,投与できる剤形に変更することを考える. |
薬を飲みやすくするための方法 |
鈴木 慶介 |
薬が飲みにくい原因は多岐にわたり,解決するには多職種連携の視点が必要である.セラピストの立場から「これは薬剤師に相談した方が良い」と多職種連携に結び付けるポイントを説明する. |
Ⅲ.リハビリテーション治療時に考慮する服用薬の影響 |
リハビリテーション薬剤を推進する医師の立場から |
若林 秀隆 |
リハビリテーション薬剤とは,フレイル高齢者や障害者の機能,活動,参加,QOLを最大限高める「リハビリテーションからみた薬剤」や「薬剤からみたリハビリテーション」である. |
リハビリテーション実施時に考慮する服薬の影響―PTとしての経験― |
保坂雄太郎ほか |
理学療法を実施するうえで誰もが悩む疼痛コントロールや化学療法中の運動療法について,理学療法士の強みを活かした多職種の連携により問題解決に至った例を紹介する. |
身体症状が持続する老年期うつ病患者の1例―薬物療法とリハビリテーション介入における回復過程― |
嘉部 匡朗ほか |
身体症状を主訴とする老年期うつ病事例の長期入院の中で経験した薬物療法経過とリハビリテーションの関係性を考察した内容. |
STとしての経験 |
稲本 陽子 |
服薬は難易度の高い嚥下課題であり,嚥下障害の有無にかかわらず困難感を示す人は多い.PILL-5は服薬を簡便にアセスメントできる質問紙票である.医療者・患者双方に服薬困難感を顕在化でき,適切な介入につながる. |
Ⅳ.服用薬によるリハビリテーション治療への影響 |
鎮痛薬 |
関谷 秀 |
鎮痛薬として処方頻度の高いアセトアミノフェン,NSAIDsを中心に,薬剤選択の際に考慮すべき薬学的特徴(薬物動態,副作用,腎機能・肝機能障害時の投与量)をまとめた. |
抗凝固薬・抗血小板薬 |
佐々木英久 |
抗凝固薬と抗血小板薬の効果的な病態や腎機能低下時や併用禁忌,手術時など出血リスクの特徴を考慮した使い分けを理解する. |
骨粗しょう症治療薬 |
星野 祐太 |
骨粗しょう症患者は特に高齢者に多く,長期的な治療を要するため,定期的なアドヒアランスや副作用の評価が求められる.本稿では,各治療薬の特徴や副作用,注意点を中心に述べる. |
筋弛緩薬・ボツリヌス毒素―療法の歴史,基礎知識と未来― |
梶 龍兒ほか |
脳卒中は世界的に見ても健康寿命に影響を与える1,2を争う.ボツリヌス毒素製剤をうまく用いることで,廃用肢を使える手に,寝たきりを歩かせることも可能になってきている.本剤の特性を理解することはリハビリテーションに関係する医療者にとって必須である. |
向精神薬について |
細川 琴実ほか |
向精神薬は,精神疾患に対する重要な治療薬であるが,その薬物が個々に持つ精神機能の改善効果だけでなく,リハビリテーションにも影響を与え得る共通の有害作用も併せ持つ. |
睡眠薬 |
吉尾 隆 |
「注意が必要な副作用と相互作用」,「脳血管障害の患者に睡眠薬を使用する場合」,「高齢者に睡眠薬を使用する場合」,「ゾルピデムによる転倒のリスク」,「レンボレキサントによる転倒のリスク」,「ベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用による認知症発症」. |
Ⅴ.薬に起因する注意事項 |
転倒の誘因となる薬と転倒に至る処方カスケード |
宮原 周三 |
転倒の誘因となる薬物有害事象の見逃しや処方カスケードを防ぐためには,診察・ケア・リハビリテーション時などに患者の様子を注意深く観察することが重要である. |
薬剤性パーキンソニズム |
松永 典子 |
薬剤性パーキンソニズムは,原因薬剤としては抗精神病薬が最も多い.原因薬剤の中止で回復する可能性が高いため,早期に発見することが重要である.安静時振戦よりも動作時・姿勢時振戦の頻度が多いため,リハビリテーション診療に携わるスタッフが発見する可能性も考えられる. |
食欲や体重に影響する薬 |
東 敬一朗 |
臨床において特に高齢者でよく見かける食欲低下,体重減少について薬剤の副作用という視点から概説し,さらにはリハビリテーションへの影響と対処法についても紹介する. |
注射剤の配合変化 |
相澤 学 |
配合変化と聞くと小難しい内容になるのではないかと思うが,本稿ではゴロ合わせを交えてポップで,かつ業務にも活かせる内容になっている. |
Ⅵ.回復期リハビリテーション病棟での薬剤師業務の実態 |
回復期リハビリテーション病棟における薬剤師業務の実際とその役割 |
藤原 久登 |
回復期リハビリテーション病棟に従事する薬剤師業務は多岐にわたるが,積極的な薬物療法への介入を行う絶好の機会であり,在宅復帰,社会復帰を目指す患者の服薬支援を行うことが薬剤師の役割と言える. |