Ⅰ.耳領域 |
外耳道癌 |
小宗 徳孝 |
外耳道癌には,主に扁平上皮癌,腺様嚢胞癌,基底細胞癌,耳垢腺癌が含まれるが,いずれの組織型も切除可能な段階で診断を確定することが重要である. |
OMAAV |
森田 由香 |
OMAAVは滲出性中耳炎と区別が困難な場合がある.鼓膜切開で改善しない場合や,鼓膜の充血,血管拡張などがある中耳炎で抗菌薬の効果がない場合にはOMAAVを疑い精査をすすめる必要がある. |
聴神経腫瘍 |
大石 直樹 |
いわゆる突発性難聴,メニエール病症例の中には,聴神経腫瘍が一定の確率で必ず存在することを十分に念頭に置いて,日常診療にあたるべきである. |
Auditory Neuropathy |
野田 昌生ほか |
Auditory Neuropathyの背景を述べつつ,海外におけるガイドラインと現況について解説を行った.さらに,問診,生理検査や画像検査,遺伝子検査について解説した. |
好酸球性中耳炎の診断,感音難聴の進行と治療 |
杉本 寿史 |
好酸球性中耳炎の診断,保存的治療,感音難聴が進み聾となった症例に対する人工内耳植込術について解説した. |
持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD) |
高橋 邦行ほか |
PPPDは急性めまいなどが生じた後,慢性的な浮動感を呈する疾患である.病態の本質は前庭覚,視覚,体性感覚が司る平衡バランスの歪みであり,詳細な問診が重要である. |
先天性サイトメガロウイルス感染症 |
安達のどかほか |
母子感染として注目されている先天性CMV感染症の診断や治療に関する最近の知見と解決すべき課題,さらには当院における治療経験や抗ウイルス薬の治療プロトコールについて紹介する. |
ランゲルハンス細胞組織球症 |
橋本亜矢子ほか |
3歳以下の難治性外耳道炎は,LCHを疑う.近年,LCH細胞にBRAF-V600E変異が認められ,難治例に対するBRAF阻害薬による新しい治療がはじまりつつある. |
Ⅱ.鼻領域 |
鼻腔腫瘍 |
飯塚さとしほか |
日常臨床においては,頻度の高い鼻ポリープの中から腫瘍性病変を的確に診断しなければならない.近年では,組織型・腫瘤の局在によって内視鏡下副鼻腔手術が第一選択となる疾患も多い. |
鼻性NK/T細胞リンパ腫 |
熊井 琢美 |
鼻性NK/T細胞リンパ腫はEBV関連の悪性リンパ腫である.診断が容易ではないため,増悪する粘膜炎や腫瘤を認めた場合は本疾患を積極的に疑って精査する必要がある. |
副鼻腔嚢胞 |
石神 瑛亮ほか |
副鼻腔嚢胞は視機能障害,頭蓋内合併症をきたすことがあるので,画像検査で早期に診断して,治療が遅れないよう心掛ける. |
上顎洞血瘤腫 |
藤井 博則ほか |
上顎洞血瘤腫は血性鼻漏と片側性の腫瘍形成をきたす疾患で,悪性腫瘍との鑑別が重要である.鑑別上有用な画像の特徴,手術加療の際に留意する点について述べる. |
ウイルス性嗅覚障害 |
近藤 健二 |
感冒後嗅覚障害は上気道炎ウイルス感染による嗅神経障害であり,中高年齢の女性に多い.治療は嗅素をつかった嗅覚刺激療法の有効性が報告されている.新型コロナウイルス感染でも嗅覚障害が発症し,従来の感冒後嗅覚障害より若年に多いという特徴がある. |
REAH(呼吸上皮腺腫様過誤腫) |
武田 鉄平ほか |
鼻副鼻腔にできる鼻腔ポリープや鼻腔乳頭腫,鼻腔腺癌などの他の疾患と肉眼所見が類似していることから誤診されることがあるため,疾患の認識が必要である. |
浸潤性副鼻腔真菌症 |
秋山 貢佐 |
浸潤性副鼻腔真菌症では的確な画像評価と生検による早期の確定診断が重要で,時期を逸さずに治療を開始する必要がある. |
Ⅲ.口腔・咽頭・喉頭領域 |
上咽頭癌 |
近藤 悟 |
咽頭癌の初発症状は日常よく遭遇するものであり,診断のための見逃しやすいポイントを解説した.また,治療後の再発早期発見のポイントについて概説した. |
中咽頭癌 |
田中 秀憲ほか |
中咽頭癌を見逃さないために,鼻腔と口腔から内視鏡で観察すること,口蓋扁桃と舌根を触診すること,側頸部の嚢胞性腫瘤には穿刺吸引細胞診を行うこと,が重要である. |
発声障害 |
溝口 兼司 |
筋緊張性発声障害や痙攣性発声障害・本態性音声振戦症・心因性発声障害の特徴的所見と診断と鑑別のポイントについて述べる. |
声帯運動障害 |
栗田 卓ほか |
声帯運動障害は反回神経麻痺以外に後部声門狭窄症,多系統萎縮症,披裂軟骨脱臼で生じうる.内視鏡検査に加えて喉頭筋電図や直達喉頭鏡検査で鑑別し,適切に治療する. |
川崎病 |
磯山 恭子 |
川崎病は咽後膿瘍類似の症状,検査所見を示すことがあり,耳鼻咽喉科医も知っておくべき疾患である.その診断,鑑別のポイントについて解説する. |
声門下狭窄症 |
二藤 隆春 |
声門下狭窄症は比較的稀な疾患であるが,上気道狭窄症状を呈する症例では,その可能性も念頭に置き,喉頭内視鏡検査と画像検査を組み合わせて検索を進める. |
Ⅳ.顔面・頸部領域 |
嚢胞性リンパ節転移 |
橋本 香里 |
成人の頸部に嚢胞性病変を認めた場合は,まず悪性腫瘍の嚢胞性頸部リンパ節転移を考える.頭頸部癌,特にHPV陽性中咽頭癌や甲状腺癌による転移を疑い,精査を進める必要がある. |
唾液腺腫脹 |
高野 賢一 |
唾液腺腫脹をきたす疾患は多種多様であり,耳鼻咽喉科医としてその背景疾患を整理・理解し,精度の高い鑑別診断を行う必要がある. |
急性甲状腺炎 |
髙橋 梓ほか |
急性化膿性甲状腺炎は下咽頭梨状陥凹瘻が原因の細菌感染である.感染を反復する症例では下咽頭造影検査で瘻管を確認し,根治的治療として瘻管摘出術が必要となる. |
Ⅴ.その他 |
多発性脳神経障害を伴うHunt症候群 |
伊藤 真人 |
・Hunt症候群に多発性脳神経障害を合併する頻度は2~3%である. |
・障害される他の脳神経はV,VI,X,XI,XIIなどがあり,下位脳神経が多い. |
・迷走神経麻痺は長期にわたり残存して予後が悪い. |
・小脳・脳幹梗塞などの中枢疾患を除外する. |