I.日常的にみられる小児の皮膚疾患 |
新生児期の生理的変化・乳児湿疹 |
高山有由美ほか |
新生児にみられる皮膚変化のほとんどは一過性で自然消退するものが多く,それらを部位別にまとめた.また,乳児脂漏性湿疹とアトピー性皮膚炎との鑑別についても述べる. |
アトピー性皮膚炎 |
朝比奈昭彦 |
アトピー性皮膚炎の病態には,アレルゲンに対する過敏性や免疫異常を示すアレルギーの側面と,ドライスキンでさまざまな刺激に敏感となる非アレルギーの側面がある. |
おむつ皮膚炎・汗疹・多汗症 |
松村 由美 |
おむつ皮膚炎,汗疹,多汗症の成立機序,治療(予防)について概説した.最近の紙おむつについての知見やスキンケアに基づいたおむつ皮膚炎の治療についても詳述した. |
脱毛症 |
大山 学 |
小児にみられる脱毛症について,特に円形脱毛症とその鑑別疾患(脱毛を呈する遺伝性疾患,トリコチロマニア,休止期脱毛,頭部白癬など)に重点を置き,特徴・診断・治療について解説した. |
中毒疹・薬疹 |
阿南 隆 |
小児の中毒疹と薬疹の特徴について概説する.薬疹の診断は適切に行われるべきであり,過大評価は避けねばならない.重症薬疹では遅発性合併症についての注意も必要である. |
虫刺症 |
石崎 純子 |
幼児では蚊刺症で著明な腫張をきたしやすい.幼小児にアタマジラミの小流行が続いている.マダニ刺症は頭部にも好発する.虫刺症に続発する二次感染に注意する. |
蕁麻疹・アナフィラキシー |
幸野 健 |
蕁麻疹はありふれた疾患であるが,いくつかの病型ではアナフィラキシーも起こりうることを銘記しておくべきである. |
接触皮膚炎 |
幸田 太 |
小児の皮膚は生理的に接触皮膚炎を起こしやすい条件を備えている.治療の根本は原因物質の除去である.そのためには原因物質を明らかにし,適正な生活指導を行うことが求められる. |
爪の異常 |
齊藤 典充 |
子どもにみられる爪疾患には,先天性と後天性がある.また爪疾患には限局性のものと,全身疾患の部分症状として変化をきたすものがあり,特徴のある臨床症状を示す. |
II.小児に多い皮膚感染症 |
伝染性膿痂疹・SSSS |
西嶋 攝子 |
伝染性膿痂疹,SSSSはいずれも表皮剥脱毒素(ET)を産生する黄色ブドウ球菌の感染によって発症する夏季における小児の代表的な細菌感染症である. |
伝染性軟属腫・尋常性疣贅・扁平疣贅 |
石地 尚興 |
小児によくみられる伝染性軟属腫,疣贅ともによい治療法がなく,症例によって治療法を工夫する必要がある. |
単純ヘルペスウイルス感染症 |
渡辺 大輔 |
単純ヘルペスウイルス(HSV)による小児の皮膚病変は多彩である.本稿では小児のHSV感染症の疫学,臨床症状,診断,治療について解説する. |
水痘・帯状疱疹 |
細矢 光亮 |
水痘・帯状疱疹ウイルスは,飛沫核(空気)感染するため,感受性者が多い集団でいったん発症すると,流行は長期間持続する.従って,集団生活に入る前にワクチンを接種しておくことが重要である. |
手足口病・エンテロウイルス感染症 |
藤田 彩乃 |
手足口病は夏風邪の一つであり,通常は軽症であるが,エンテロウイルス71の流行によっては中枢神経合併症を伴い重症化することもある. |
麻疹・風疹・突発性発疹・伝染性紅斑 |
清島真理子 |
麻疹,風疹,突発性発疹,伝染性紅斑は小児に好発する急性ウイルス性発疹症である.通常予後は良好であるが,ときに重症化例,後遺症を残す例があるので注意が必要である. |
白癬・カンジダ症・スポロトリコーシス |
加藤 卓朗 |
白癬,カンジダ症,スポロトリコーシスの臨床症状は多彩で,診断は真菌検査(特に直接鏡検)で行う.治療は抗真菌薬の外用と内服の選択が重要である. |
III.全身疾患に伴う皮膚病変 |
川崎病(Kawasaki disease) |
出光 俊郎ほか |
皮膚科医の役割は発熱と発疹を伴う患者の皮膚粘膜所見から川崎病の早期診断を的確に行うことにある.初期に免疫グロブリン治療を行えば,発熱期間の短縮,炎症反応の早期改善,冠動脈病変の発生を抑制することが可能である. |
新生児エリテマトーデス・SLE・シェーグレン症候群 |
谷川 瑛子 |
NLEの皮疹は通常6か月で消退する.小児SLEの皮疹は蝶形紅斑が最も多く,DLEなどの慢性型皮疹は稀である.小児SjSでは乾燥症状を欠くことが特徴である. |
皮膚筋炎・全身性強皮症 |
永井 弥生ほか |
皮膚筋炎,全身性強皮症の小児例は稀だが,成人とは異なる特徴を有し,小児独自の診断基準作成が提唱されている.限局性強皮症は小児にも好発し,機能的予後が問題となることがある. |
紫 斑 |
中野 敏明ほか |
紫斑の原因,臨床所見と診断の進め方,また小児の臨床でよく遭遇するHenoch-Schönlein purpura(idiopathic thrombocytopenic purpura)と特発性血小板減少性紫斑病について,その臨床的特徴と鑑別疾患,診断,治療法を中心に解説する. |
IV.先天性皮膚疾患 |
いちご状血管腫・ポートワイン母斑 |
岩本 拓 |
いちご状血管腫とポートワイン母斑について概説した.いちご状血管腫では増殖性変化をきたす前に治療すること,ポートワイン母斑では深部病変を発見することが重要である. |
扁平母斑・神経線維腫症1型・2型・Albright症候群 |
川内 康弘 |
いわゆるカフェオレ斑を呈する疾患は,扁平母斑が最もありふれたものであるが,ときに神経線維腫症1(NF1),神経線維腫症2(NF2),Albright症候群などの先天性母斑症の皮膚症状である場合もある. |
太田母斑・異所性蒙古斑 |
百澤 明 |
Qスイッチレーザーによるレーザー治療が第一選択であり,治療法は既に確立されている.最もメラニンに対する吸収のよいQスイッチルビーレーザーが第一選択のレーザーであるが,QスイッチアレキサンドライトレーザーやQスイッチNd:YAGレーザーの特徴を理解して,使い分けることも,さらなる治療の質の向上に必要なことである. |
色素細胞母斑・神経皮膚黒皮症・Spitz母斑 |
宇原 久 |
メラノーマ発生予防のために大型の母斑は切除したほうがよいのか? 中枢神経病変の早期発見のためにMRIは有用なのか? |
白皮症・脱色素性母斑・伊藤白斑・結節性硬化症 |
占部 和敬 |
先天性の色素脱失を示す小児の疾患について解説した. |
色素失調症・色素血管母斑症 |
馬場 直子 |
母斑が初発症状となり,神経系はじめ他臓器の種々の合併症を持つ可能性のある,色素失調症と色素血管母斑症について,診断と治療,長期フォローの要点を述べた. |
表皮水疱症 |
秋山 真志 |
表皮水疱症は,解剖学的水疱形成部位により3型に分類される.単純型は表皮内に,接合部型はlamina lucidaに,栄養障害型はlamina densaの下方に水疱を生じる. |
乾癬・類乾癬・掌蹠角化症・毛孔性紅色粃糠疹 |
濱田 尚宏 |
小児の乾癬,類乾癬,毛孔性紅色粃糠疹の臨床的特徴や診断,治療について概説する.また,遺伝性皮膚疾患である掌蹠角化症の病型分類を,最近明らかになりつつあるそれぞれの病因分子を含めて簡潔にまとめた. |
肥満細胞症 |
古橋 卓也ほか |
肥満細胞症の分類,検査,治療に関して概説した.分類では,Metcalfe・Haaseの分類改変,WHO分類を紹介.必要な検査や治療についても,概説した. |
魚鱗癬・魚鱗癬様紅皮症・魚鱗癬症候群 |
石河 晃 |
先天性魚鱗癬は紅斑を伴わない尋常性魚鱗癬,伴性遺伝性魚鱗癬と,紅斑を伴う水疱型および非水疱型魚鱗癬様紅皮症,さらに合併症を有する魚鱗癬症候群に大別される.正確な診断は予後の評価に重要である. |
V.稀だが気をつけるべき皮膚疾患 |
組織球症 |
今宿 晋作 |
組織球症にみられる皮疹は皮膚のみの疾患でなく,全身性疾患の一症状である.皮疹を生検すれば容易に的確な診断に至る.皮疹の存在を見落とさないこと,皮疹の生検を躊躇しないことが大切になる. |
光線過敏症 |
八木 宏明 |
小児期の光線過敏症は,稀な疾患であることが多いが,悪性腫瘍や全身症状を伴い予後不良なものが多いことから,日常診療においても見逃してはならない重要な疾患である. |