I.向精神薬の基礎知識 |
1.向精神薬が有効な耳鼻咽喉科疾患―耳鼻咽喉科の立場から |
清水 謙祐 |
耳鼻咽喉科疾患は精神疾患併存の可能性があり(難聴・嗅覚障害と認知症),向精神薬投与が有効な場合がある.しかしベンゾジアゼピン系薬物依存と抗うつ薬躁転に注意すべきである. |
2.心療内科からみた耳鼻咽喉科疾患の病態と治療 |
村上 正人ほか |
情動的要因を背景とした耳鼻咽喉科疾患の診断と治療のためには身体的・生理的要因と心理社会的ストレスとの関係を探り,心身相関を考慮した病態解析が重要である. |
3.向精神薬の分類と薬理作用 |
久保 馨彦ほか |
向精神薬は中枢神経に作用する薬剤の総称である.作用機序にはセロトニン,ノルアドレナリン,ドパミンなどの神経伝達物質がかかわり,それぞれの薬剤の副作用を理解したうえで処方する必要がある. |
4.耳鼻咽喉科で主に用いられる抗うつ薬 |
新井 基洋 |
耳鼻咽喉科領域患者における精神症状治療介入は症状の改善ばかりでなくQOL向上のためにも重要な問題である.そこで,耳鼻咽喉科医に求められる抗うつ薬の知識と有効な薬剤の選択と使用についてまとめた. |
5.耳鼻咽喉科でよく用いられる抗不安薬 |
和田 哲郎ほか |
不安を背景に症状は出現,増悪する.原疾患の治療とは別に,抗不安薬を含めた治療戦略を考えることは極めて有効である.効果と副作用を秤にかけ,適切な投与を心掛ける. |
6.耳鼻咽喉科でよく用いられる睡眠薬 |
中山 明峰ほか |
1.日本睡眠学会推奨,「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」に準じた診断と治療を行うことが好ましい.
2.不眠診療の第一歩は診断であり,治療の第一歩は睡眠衛生指導である.
3.投薬の第一選択はベンゾジアゼピン製剤を避けるべきであり,症状に合わせ,エスゾピクロン,ラメルテオン,スボレキサントなどを選択か,併用する. |
7.耳鼻咽喉科における向精神薬の使用実態調査 |
五島 史行ほか |
耳鼻咽喉科医63例(男性52人,女性11人)を対象として新規抗うつ薬,抗うつ薬,抗不安薬,睡眠薬のいずれかを処方すると答えた医師は56例であり,比較的高い割合で処方が行われていた. |
II.向精神薬の使い方 |
1.メニエール病に対する向精神薬の適応と使い方 |
室伏 利久 |
心理的要因の関与の程度を評価したうえで,向精神薬を用いる.まず,非ベンゾジアゼピン系の薬剤を投与し,効果が低い場合にベンゾジアゼピン系の薬剤を投与する. |
2.心因性めまいに対する向精神薬の適応と使い方 |
堀井 新 |
めまい患者には不安症やうつの合併が多い.器質的前庭疾患の有無にかかわらず,心因性めまいにおいてSSRI投与は精神症候だけでなくめまいの自覚症状も改善させる. |
3.前庭神経炎に対する向精神薬の適応と使い方 |
橋本 誠ほか |
前庭神経炎急性期には対症療法の1つとして抗不安薬が用いられる.慢性期で心因性めまいへ移行した場合の抗不安薬投与に際しては,依存性に留意する. |
4.良性発作性頭位めまい症に対する向精神薬の適応と使い方 |
肥塚 泉 |
BPPVは高齢者に多い疾患である.高齢者に特有のストレスに対応することが,浮遊耳石置換法施行後の遷延する浮動感などの改善につながることがある. |
5.動揺病に対する向精神薬の適応と使い方 |
吉田 友英 |
動揺病はいわゆる乗り物酔いのことである.乗り物酔いがひどくなる原因の1つにパニック障害があり,SSRIが治療の第一選択である.乗り物に乗る前に抗不安薬を頓服で服用するのもよい. |
6.頭痛に対する向精神薬の適応と使い方 |
藤本 千里 |
一次性頭痛は,耳鼻咽喉科に関連する症状を随伴し,しばしば耳鼻咽喉科疾患との鑑別を要する.向精神薬は,片頭痛および緊張型頭痛に対する予防療法として用いられる. |
7.耳鳴に対する向精神薬の適応と使い方 |
大石 直樹ほか |
耳鳴の重症化因子として,うつ,不安,不眠の合併が挙げられる.随伴症状の改善が耳鳴の改善につながる場合があり,本稿では文献レビューを通じて,向精神薬の治療効果についてまとめた. |
8.頭頸部がん患者の緩和ケアにおける向精神薬の使い方 |
大嶋健三郎ほか |
頭頸部がんでは,向精神薬の適切な使用が症状マネジメントを左右する.本稿では,頭頸部がん患者の代表的な症状に対する向精神薬の使用方法について概説する. |
9.術後せん妄に対する向精神薬の使い方 |
今井 篤志ほか |
術後せん妄は手術侵襲に伴う一過性精神障害で,患者のQOLや医療経済にも影響を及ぼす.薬物療法は対症的であり,適切な診断と原因除去だけでなく予防対策も重要である. |
10.咽喉頭異常感症に対する向精神薬の適応と使い方 |
平林 秀樹 |
咽喉頭異常感症に用いる抗不安薬はベンゾジアゼピン系の薬剤が使用されるが,作用時間,抗不安,鎮静傾眠,筋弛緩,抗けいれんにそれぞれ作用が異なり注意が必要である. |
11.不定愁訴に対する向精神薬の使い方―不定愁訴には東洋医学アプローチを― |
犬飼 賢也 |
身体疾患がないから精神疾患だというわけではない.不定愁訴に対しては安易な抗不安薬,抗うつ薬,睡眠薬の使用は避けるべきである.東洋医学的アプローチは心身一如の考えで行われるので不定愁訴に適している. |
12.心因性発声障害に対する向精神薬の使い方 |
鈴木 二郎 |
心因性発声障害は器質的障害のない発声の障害であり,失声,嗄声,痙攣性発声などがある.発症の契機は,職場内,家族間軋轢,声専門職業,その他がある.向精神薬の処方は,精神療法的面接とともに,抗不安薬を中心に行う. |
13.睡眠障害に対する向精神薬の使い方 |
鵜殿明日香ほか |
不眠症は頻度の高いcommon diseaseであり,各種睡眠薬を有効かつ安全に使いこなすためには,それぞれの特徴と適応を慎重に吟味する必要がある. |