A.外来診断・治療ツール 私はこう使っている |
1.ダーモスコピーを使う |
田中 勝
木本雅之 |
ダーモスコピーを日常的に活用するためには,使い慣れた機種を常に使いやすい状態に準備しておくことが最も重要である. |
2.エコーを使ってみる |
大畑恵之 |
エコーは非侵襲的で,装置が小型であり,また画像診断の中で最も解像度が高いため,腫瘍の術前検査のみならず,炎症性疾患の経過観察にも有用である. |
3.Wood灯を活用する |
大西誉光
渡辺晋一 |
長波長紫外線照射による蛍光の原理を述べ,蛍光物質を有する個々の疾患の特徴や診断法について概説した. |
4.サージトロン |
中川浩一 |
皮膚外科領域における,安全性かつ有用性の高い手術器械―サージトロンを,ぜひ日常診療に役立てていただきたい. |
5.炭酸ガスレーザー |
是枝 哲 |
炭酸ガスレーザーは,その治療適応疾患は広く,だれにでも簡便に使用できることもあり,皮膚科外来診療において,非常に有用な機器である. |
B.外来検査の極意 |
1.白癬に見えるが真菌が見つからないとき |
加藤卓朗 |
臨床的に白癬を疑うときは可能な限り多くの部位を繰り返して検査し,抗真菌薬の治療歴がない場合は,菌を確認しない限り抗真菌薬を使用しない. |
2.疥癬を見つける極意 |
和田康夫 |
疥癬虫を見つける極意は,疥癬トンネルを探すことである.ダーモスコピーを用いると,疥癬トンネルに住む疥癬虫を肉眼で見ることができる. |
3.皮膚描記法は役立つか? |
安部正敏
石川 治 |
皮膚描記法は,確定診断に直結する検査法ではないが,正しい手技を習得することで有力な診断の手がかりとなる.患者への侵襲も少なく,日常臨床にぜひ活用したい検査法である. |
4.外来で行うツァンク試験 |
堀口裕治 |
陽性というのは容易であるが,見つからない場合に陰性と判断するのが困難なのは真菌の鏡検と同じである.ツァンク細胞を速やかに同定する技術があってこそ陰性と判断しうる. |
C.達人の外来皮膚疾患鑑別法 |
1.カポジ水痘様発疹症と伝染性膿痂疹の鑑別法 |
本田まりこ |
一種の細胞診であるTzanck試験をまめに行うことが大切である. |
2.会陰部の帯状疱疹と単純疱疹の鑑別法 |
安元慎一郎 |
会陰部のヘルペス性疾患の鑑別に最も簡便かつ有用なのは,現在のところ,蛍光抗体法によるウイルス抗原検出法である. |
3.尋常性毛瘡と白癬菌性毛瘡の鑑別法 |
望月 隆 |
口囲の膿疱をみた場合は真菌検査を行うとともに,顔面や足などの白癬の有無を確認する. |
4.肝斑と遅発性両側性太田母斑様色素斑(ABNOM)の鑑別法 |
占部和敬 |
両者の鑑別が難しい症例がある.典型例と鑑別点について概説し,また,欧米での報告が少ない理由に言及した. |
5.足底疣贅と鶏眼の鑑別法 |
江川清文 |
近年,足底疣贅の臨床病型の多様性が明らかになっている.HPV感染に関する新しい知見に基づいた,鶏眼と足底疣贅の鑑別診断法について,ダーモスコピー所見なども交えて解説した. |
6.麻疹と風疹 |
日野治子 |
麻疹と風疹の臨床症状および皮膚症状とその組織所見の特徴を自験例を中心に述べる. |
D.外来診断に悩むとき |
1.臭わない腋臭症患者をどう診るか |
宮崎孝夫 |
皮膚科における自己臭妄想(恐怖)患者の診療とは,心療内科的治療を行うことではなく,皮膚科的治療を行いながら患者の腋臭自覚の軽減を行うことである. |
2.どこからが男性型脱毛なのか |
中村元信 |
特に父親や兄弟が男性型脱毛症の場合,臨床的に脱毛症状を認めなくても,脱毛を主訴に受診する神経的脱毛危惧症の患者があり,男性型脱毛症との鑑別が重要である. |
3.爪の扁平苔癬 |
早川和人 |
爪の扁平苔癬,特に爪に限局する症例の臨床的特徴,病理学的所見などについて詳述した.またtwenty-nail dystrophy,円形脱毛症との関係についても言及した. |
E.メスを使わない外来治療法 |
1.脂漏性角化症 |
安田 浩
西尾明子
宮崎文男 |
脂漏性角化症に対して凍結療法,電気凝固法,炭酸ガスレーザーによる治療法を概説した.炭酸ガスレーザー治療がメスを使わない治療では最もよい治療である. |
2.稗粒腫 |
門野岳史
前川武雄
玉置邦彦 |
稗粒腫に対する外来治療法として,コメド圧子を用いる方法と炭酸ガスレーザーを用いる方法について述べた. |
3.アクロコルドンの外科的治療法 |
谷岡未樹 |
アクロコルドンのさまざまな外科的治療法の実際とそのこつについて記載した. |
4.粘液嚢腫,ガングリオン |
立花隆夫 |
外科的切除を選択する前に,非観血的治療として指(趾)粘液嚢腫には凍結療法など,また,ガングリオンに対しては圧搾法などを行ってみる. |
5.汗管腫 |
橋本 透 |
汗管腫に対する種々の治療法の中で,炭酸ガスレーザーは極めて有用な治療法である. |
6.眼瞼黄色腫 |
池田光徳 |
眼瞼黄色腫は,プロブコールの全身投与と液体窒素圧抵療法(凍結療法)や塩素化酢酸を用いた化学的焼灼などのメスを使わない局所療法とを併用して治療する. |
7.陥入爪 |
河合修三 |
従来の保存的治療法にはさまざまなものがあり,それなりの効果を認めるものの,万能とは言えないものであったが,VHO式爪矯正法は優れた保存的治療法である. |
F.外用療法のスキルアップ |
1.足白癬の外用療法 |
仲 弥 |
日常診療において足白癬患者は多く,皮膚科医たるものはその治療に習熟する必要がある.一筋縄ではいかない足白癬の外用療法につき,詳細に記載した. |
2.薬剤重層が有用なとき |
江藤隆史 |
アトピー性皮膚炎(AD)の?破局面に対し亜鉛華軟膏などの貼布法を併用する重層療法は極めて有用.2つの外用剤を重層する際,コンプライアンス向上のため混合調整が行われるが,さまざまな問題点がある. |
3.いつ塗るどう塗る保湿剤 |
宮地良樹 |
保湿剤は入浴後早めに,適量と感じる量(かろうじて光る程度あるいはティッシュペーパーが付着する程度)よりもやや多めに外用するのが効果的である. |
4.どう貼るいつ剥がすスピール膏 |
服部 瑛
岡井和久 |
スピール膏の具体的な貼り方,剥がし方のこつを記述した.併せてスピール膏についての基礎的話題も提供し,新しいOTC製剤も紹介した. |
G.ありふれた皮膚疾患のベスト治療と私の工夫 |
1.伝染性軟属腫 |
渡邊孝宏 |
伝染性軟属腫の治療として過去に報告されたものを可能な限り多く取り上げてみた.各治療法の長所と短所を十分に理解したうえで治療法を選択することが肝要である |
2.伝染性膿痂疹 |
黒川一郎
西嶋攝子 |
伝染性膿痂疹の診断,治療のポイントについて,抗菌剤投与のみに頼らないことを述べた. |
3.帯状疱疹後神経痛 |
小澤 明 |
帯状疱疹後神経痛の治療に関して,我が国における現状をまとめ,我々が行っているイオントフォレーシス療法,治療の工夫を紹介した. |
4.肥厚性瘢痕,ケロイド |
鈴木茂彦 |
肥厚性瘢痕は炎症を持続させる原因の除去が先決である.ケロイドはステロイド局注治療を続けるか,放射線治療を併用した手術治療を行い,緩解状態の維持を目指す. |
5.毛孔性苔癬 |
三橋善比古 |
汎発型毛孔性苔癬の責任遺伝子が第18染色体短腕に局在するLAMA1であることが示された.LAMA1はラミニンを形成するペプチドであるラミニンα1鎖をコードする. |
6.コリン性蕁麻疹 |
森田栄伸 |
抗ヒスタミン薬が無効の場合,抗ヒスタミン薬に加えて抗コリン薬あるいはステロイドの併用や,入浴や運動による減感作が奏効する場合がある. |
7.凍 瘡 |
妹尾明美 |
寒冷曝露により手足の末梢循環が悪くなり生じるため,凍瘡は治療そのものより予防が第一である.保温に努め,外出時には防寒対策を十分にとる.成人の季節外れの凍瘡は膠原病などの疾患に注意する. |
8.肝 斑 |
葛西健一郎 |
肝斑の成因には‘こすりすぎ’による慢性バリア破壊が深く関与しているので,対症療法とは別に,顔を‘こすらない’生活習慣を身につけさせる患者教育が重要である. |
9.血管拡張性肉芽腫 |
加倉井真樹
出光俊郎 |
血管拡張性肉芽腫の治療法として,ステロイド外用後結紮療法およびオープントリートメントについて詳述した. |
10.口囲炎・口唇炎 |
伊崎誠一 |
落屑性口唇炎の頻度は高いが,あくまで除外するべき疾患を除外してはじめて到達する診断であることを銘記する. |
11.口囲皮膚炎 |
滝脇弘嗣 |
テープストリッピングトルイジンブルー染色法を用いた病変部生毛のフソバクテリア検出方法と,治療のこつを述べた. |
12.掌蹠多汗症 |
嵯峨賢次
佐藤牧人 |
掌蹠多汗症の診断と治療法における工夫とこつを述べた.掌蹠多汗症患者の苦痛は大きい.患者に最も適した治療法を選択することが大切である. |
13.尋常性白斑 |
山口裕史
片山一朗 |
尋常性白斑の特徴を述べ,活性型ビタミンD3・局所免疫抑制薬外用・短波長紫外線ランプ・エキシマーレーザー・吸引水疱蓋表皮移植術を用いた段階的治療について述べた. |
14.慢性痒疹 |
立花隆夫 |
患者の同意を得た後に,マクロライド系抗菌薬(ロキシスロマイシンやクラリスロマイシンなど)の内服を試してみるとよい. |
15.マダニ刺咬症 |
真家興隆 |
マダニ刺咬を見たら,まずは口器を残さずに虫体を除去すること,および特に本邦にあってはライム病,野兎病,日本紅斑熱の続発に注意することである. |
16.ムカデ咬症 |
真家興隆 |
ムカデ咬症を侮ってはいけない.死亡例や失明例も出ているのである.ハチ毒と同様,アナフィラキシーショックを起こす可能性を認識しておくことが大切である. |
H.ちょっと手こずる外来治療 |
1.液体窒素治療が無効な尋常性疣贅 |
石地尚興 |
エビデンスのある治療法は少なく,いろいろな治療を根気よく丁寧に試みるのがよい. |
2.皮膚寄生虫症妄想 |
夏秋 優 |
皮膚寄生虫症妄想は,「ある種の‘虫’が皮膚に寄生している」という訂正不能で誤った確信を持つ状態である.患者の訴えを否定せず,適切な薬物療法を行う必要がある. |
3.汗疱状湿疹患者の金属摂取制限法 |
足立厚子
堀川達弥 |
患者の手湿疹が汗疱状湿疹であるか否かを見極め,汗疱状湿疹では,食物中や歯科金属に含まれる金属に対する全身型金属アレルギーの関与を疑うことがポイントである. |
4.下痢便が続く肛門周囲のスキンケア |
三富陽子 |
下痢便が続く肛門周囲のスキンケアの基本は,下痢便の接触を防ぐこと,皮膚の浸軟を予防すること,そして洗浄時の機械的刺激(洗いすぎ,こすりすぎ)を避けることである. |
5.女性の壮年性脱毛 |
植木理恵 |
臨床分類も治療も確立されていない点で手こずるが,原因がさまざまであることを理解していただきたい. |
6.顔面の夏みかん様毛孔開大を気にするとき |
上田説子 |
SA-PEGピーリングで表皮および毛孔内に固着,堆積した角質が剥離除去され,毛孔閉塞はなくなり毛孔開大は目立たなくなるが,既に毛孔開大をきたした組織変化は復元できない. |